デジタル情報の海を泳ぎ切る:Evernote/Notion/OneNoteの検索・整理機能徹底比較
情報過多の時代において、日々の業務やプライベートで扱う情報は膨大になりがちです。必要な情報がどこにあるか分からなくなり、探す時間ばかりが消費されてしまうという課題に直面している方も少なくないでしょう。情報が整理されていない状況は、業務効率の低下や機会損失に繋がることもあります。
本記事では、このような「情報迷子」の状態から脱却し、必要な情報を素早く見つけ出し、効率的に管理するための「検索機能」と「整理機能」に焦点を当て、主要な情報管理ツールであるEvernote、Notion、OneNoteを徹底的に比較します。この記事を読むことで、ご自身の情報管理スタイルに最適なツールを見つけ、日々の情報整理を劇的に改善するための具体的なヒントを得られることでしょう。
情報管理における「検索」と「整理」の重要性
デジタル化が進む現代において、私たちは日々、Web記事、メール、会議メモ、顧客情報、資料、アイデアなど、多種多様な情報を扱っています。これらの情報をただ集めるだけでは、いざ使いたい時に見つけられず、結局同じ情報を再度探し回ったり、作り直したりすることになりかねません。
ここで重要となるのが、「検索」と「整理」です。 * 検索機能:蓄積された情報の中から、特定のキーワードや条件に基づいて目的の情報を迅速に探し出す能力です。この機能が優れていれば、情報をどこに保存したかを細かく覚えていなくても、キーワードさえ分かれば瞬時にアクセスできます。 * 整理機能:情報を体系的に分類し、構造化して保存する能力です。適切に整理されていれば、検索に頼らずとも、直感的に目的の情報にたどり着くことが可能になります。
これら二つの機能は、情報管理の効率を大きく左右します。それぞれのツールがこれらの機能をどのように提供しているかを見ていきましょう。
Evernoteの検索・整理機能
Evernoteは「すべてを記憶する場所」というコンセプトの通り、大量の情報を素早く探し出すための強力な検索機能と柔軟な整理機能が特徴です。
特徴
- 強力な全文検索:保存されたテキスト、画像内の文字(手書き文字も含む)、PDFやOfficeドキュメント内の文字まで検索対象となります。これにより、ノートの内容を覚えていなくてもキーワードで瞬時に探し出せます。
- ノートブックとスタック:ノート(メモ)を「ノートブック」で分類し、さらに複数のノートブックを「スタック」でまとめることで階層的に整理できます。
- タグ機能:ノートブックの分類とは別に、ノートに複数のタグを付与することで、横断的な整理や多様な視点からの情報抽出が可能です。
- Webクリップ:Webページをきれいに保存し、後から検索・参照できる機能は、Webから情報を収集する営業職の方にとって特に便利です。
具体的な活用例(営業職の視点)
- 顧客からの問い合わせ履歴の検索:過去のメールやチャットのやり取りをEvernoteに保存していれば、顧客名や製品名で検索し、瞬時に対応履歴を確認できます。
- 領収書や名刺のデジタル管理:スキャンした領収書や名刺の画像から文字を認識し、日付や店舗名で検索して経費精算を効率化できます。
- 業界ニュースや競合情報のストック:Webクリップで保存した記事に「競合」「市場動向」などのタグを付け、必要な時にまとめて参照することで、商談前の情報収集時間を短縮できます。
得意なこと・苦手なこと
- 得意なこと:膨大な量の非構造化データ(テキスト、画像、PDFなど)を保管し、強力な検索機能で目的の情報を素早く見つけ出すこと。Webクリップによる情報収集と活用。
- 苦手なこと:構造化されたデータ(例えば顧客リストの表形式データなど)を高度に管理・分析すること。タスク管理やプロジェクト管理のような連携性の高い機能は限定的です。
Notionの検索・整理機能
Notionは、単なるメモアプリの枠を超え、ドキュメント、プロジェクト管理、データベース、Wikiなど、あらゆる情報を柔軟に構築できるワークスペースです。その整理機能は非常に強力で、構造化された情報の管理に優れています。
特徴
- データベース機能:表、ボード、カレンダー、ギャラリー、リスト、タイムラインなど、多様なビューで情報を管理できる強力なデータベース機能が核となります。各アイテム(ページ)には「プロパティ」を設定し、情報を構造化できます。
- プロパティとフィルター・ソート:データベース内の情報に「担当者」「進捗状況」「期限」などのプロパティを設定し、これらのプロパティで自由に情報をフィルターしたり、ソートしたり、グループ化したりすることで、必要な情報だけを抽出・表示できます。
- ページ構造とリレーション:ページ内にさらにページを作成する階層的な構造と、データベース間で情報を「リレーション(関連付け)」する機能により、複雑な情報でも関連付けて整理できます。
- 高速なページ内検索とワークスペース検索:ページ内のコンテンツはもちろん、ワークスペース全体のページを対象とした検索も非常に高速です。
具体的な活用例(営業職の視点)
- 顧客情報データベース:顧客ごとにページを作成し、担当者、企業規模、最終接触日、商談履歴などをプロパティとして管理。フィルター機能で「今週中にフォローが必要な顧客」や「特定製品に関心のある顧客」を瞬時にリストアップできます。
- 営業日報とタスク管理:日報データベースとタスクデータベースを連携させ、特定の日報に関連するタスクを自動で表示させたり、過去の営業活動を振り返ったりすることが容易になります。
- 提案資料のテンプレート管理:提案資料のテンプレートをデータベース化し、顧客の業種やニーズに合わせて必要な情報を瞬時に引き出し、効率的に資料作成を進められます。
得意なこと・苦手なこと
- 得意なこと:高度に構造化された情報を自在に管理・操作すること。データベース機能による多様なビューでの情報表示。プロジェクト管理や顧客管理など、連携性の高い情報管理。
- 苦手なこと:自由な形式のメモやWebクリップを「とりあえず放り込む」ような用途は、構造化の手間がかかるためEvernoteほど手軽ではありません。慣れるまでに学習コストがかかることがあります。
OneNoteの検索・整理機能
OneNoteは、Microsoftが提供するデジタルノートアプリで、紙のノートのように自由なレイアウトでメモを取れることが特徴です。Microsoft Office製品との連携が強みです。
特徴
- ノートブック、セクション、ページ:紙のノートのように「ノートブック」があり、その中に「セクション(章)」、さらに「ページ(個別のメモ)」、そして「サブページ」という階層構造で情報を整理します。
- 自由なキャンバス:ページは無限に広がるキャンバスであり、テキスト、画像、手書き、ファイル、Webリンクなどを自由に配置できます。
- 強力な検索機能:全てのノートブック内のテキスト、画像内のテキスト(OCR)、さらには手書き文字まで検索対象となります。Office製品との連携により、WordやExcelファイル内のテキストも検索可能です。
- Microsoftエコシステムとの連携:Outlookのタスクと連携させたり、Word文書を直接貼り付けたりと、他のMicrosoft製品との親和性が高いです。
具体的な活用例(営業職の視点)
- 会議議事録の管理:会議中に手書きやタイプでメモを取り、その場で写真や関連資料を貼り付けられます。後からキーワードで議事録を検索し、重要な決定事項を素早く参照できます。
- アイデア帳としての活用:顧客との会話で生まれたアイデアや、移動中に思いついた企画などを、文字だけでなく図や手書きイラストで自由に表現し、後から関連するキーワードで探し出せます。
- 製品情報の集約:製品カタログや仕様書、Q&AなどをOneNoteに集約し、セクションごとに分類することで、顧客からの質問に迅速に答えられる営業ツールとして活用できます。
得意なこと・苦手なこと
- 得意なこと:自由なレイアウトで情報を記録し、手書きメモを含め全てを検索対象とすること。Microsoft Office製品を日常的に利用している方にとっては、シームレスな連携が大きなメリットです。
- 苦手なこと:Notionのような高度なデータベース機能や、項目ごとの細やかな構造化は得意ではありません。複雑なプロジェクト管理や、複数の要素を組み合わせた情報分析には向いていません。
主要機能比較表:検索・整理に特化
| 機能項目 | Evernote | Notion | OneNote | | :------------------- | :-------------------------------------- | :--------------------------------------- | :---------------------------------------- | | 情報の階層構造 | ノートブック > スタック > ノート | ページ > サブページ > データベース | ノートブック > セクション > ページ > サブページ | | 全文検索 | 〇(テキスト、画像内文字、PDF、Office文書) | 〇(ページコンテンツ全体、データベース内) | 〇(テキスト、画像内文字、手書き文字、Office文書) | | タグ機能 | 〇(柔軟に複数付与可能) | 〇(データベースのプロパティとして設定) | ×(直接的なタグ機能はなし、インデックス語で代用可) | | データベース機能 | ×(限定的、表形式は可能) | 〇(強力、多様なビュー) | ×(表形式は可能だがデータベース機能はなし) | | 手書き認識検索 | 〇(画像内の手書き文字を認識) | ×(画像内のテキスト認識は限定的) | 〇(手書き文字、図形を認識) | | フィルター・ソート | 〇(検索結果、タグでの絞り込み) | 〇(プロパティで自在に絞り込み、並べ替え) | 〇(検索結果の絞り込み) | | Webクリップ | 〇(高機能、記事やページを整形して保存) | 〇(Chrome拡張機能でページを保存) | 〇(共有機能でWebページを送信、整形度はEvernoteに劣る) | | ファイル添付内検索 | 〇(PDF、Office文書内のテキストを検索) | 〇(PDFなどのファイル内のテキストを検索) | 〇(PDF、Office文書内のテキストを検索) |
ツール選びのポイント:あなたの「探す」を最適化するために
最適なツールを選ぶためには、ご自身が「どのような情報を」「どのように」管理し、「どのように」探したいかを具体的にイメージすることが重要です。
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扱う情報の種類と量
- テキスト中心、画像、PDFなど非構造化データが多い場合:強力な全文検索が求められます。EvernoteやOneNoteが適しています。
- 顧客情報、タスク、プロジェクト進捗など、構造化されたデータが多い場合:データベース機能が重要です。Notionが強みを発揮します。
- 手書きメモが多い、紙媒体をデジタル化したい場合:手書き認識機能が必須です。OneNoteやEvernoteが有効です。
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情報整理のスタイル
- とりあえず放り込んで後から検索したい:タグや全文検索に頼るスタイルであればEvernoteが直感的です。
- 体系的に分類し、階層構造で管理したい:ノートブック/セクション/ページ構造のEvernoteやOneNote、またはNotionのページ階層が考えられます。
- 情報を様々な角度から見たい、柔軟なデータベースを構築したい:Notionのデータベース機能が圧倒的に優れています。
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既存のツールとの連携
- Microsoft Office製品を頻繁に利用している場合:OneNoteはOutlookやWordなどとの連携がスムーズです。
- 多様なオンラインサービスと連携し、オールインワンで管理したい場合:Notionは様々な情報を集約・連携させるハブとして機能します。
こんな人におすすめ:具体的な利用シーン
Evernoteがおすすめの人
- 膨大な量の情報の中から、キーワードで瞬時に目的の情報を探し出したい方。 例えば、過去の商談履歴、顧客からのメール、ウェブで見つけた市場調査記事など、どこに保存したか覚えていなくても、キーワードで一発検索したい営業職の方。
- Webページや紙媒体の情報を手軽にデジタル化して、全てを検索対象にしたい方。 営業先で見つけたパンフレットや、会議で配られた資料を写真に撮り、後からその中の文字で検索したい場合など。
- メモ、アイデア、情報収集が中心で、複雑な構造化は不要という方。 自分のアイデアを走り書きしたり、気になった情報をとりあえずクリップしておきたい場合など。
Notionがおすすめの人
- 顧客管理、タスク管理、プロジェクト進捗など、構造化された情報を自在に管理し、複数の視点から分析したい方。 例えば、顧客データベースと商談履歴を連携させ、未対応の顧客リストを抽出し、担当者別にタスクを割り振りたい営業マネージャーの方。
- 「自分だけの情報管理システム」をゼロから構築したい方。 営業活動のワークフローに合わせて、顧客情報、案件情報、提案資料、日報などを一元的に管理できるダッシュボードを作りたい場合など。
- チームで情報を共有し、共同で作業を進めることが多い方。 各自の営業進捗や共有ドキュメントを一箇所で管理し、メンバー全員で最新情報にアクセスできる環境を構築したい場合など。
OneNoteがおすすめの人
- 紙のノートのように自由な形式でメモを取りたい方。 会議中に手書きで図を交えながらメモを取り、その場で関連資料のスクリーンショットを貼り付けたい営業職の方。
- Microsoft Office製品を日常的に利用しており、シームレスな連携を重視する方。 Outlookの予定と連携させて議事録を作成したり、Word文書を直接貼り付けて管理したい場合など。
- 手書き文字や画像内の文字も検索対象にしたい方。 顧客との会話で書いたメモやホワイトボードの内容を写真に撮って保存し、後からその文字で検索したい場合など。
結論
Evernote、Notion、OneNoteはそれぞれ異なる強みを持つ情報管理ツールであり、「検索」と「整理」のアプローチも特徴的です。 * Evernoteは、大量の非構造化データの中から、強力な全文検索で瞬時に目的の情報を見つけ出すことに長けています。 * Notionは、高度なデータベース機能を活用し、構造化された情報を自在に整理・分析することに優れています。 * OneNoteは、自由なレイアウトで情報を記録し、手書きメモも含めて検索できる柔軟性と、Microsoft製品との連携が強みです。
情報過多の時代を賢く生き抜くためには、自分自身の情報管理スタイルや、普段どのような情報を扱っているかを理解し、それに最も適したツールを選ぶことが重要です。まずはそれぞれのツールの無料プランなどを試用し、実際に触れてみながら、ご自身の「探す」時間を最適化するための最適なパートナーを見つけていただければ幸いです。